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相模湖

相模湖の看板。いい感じに朽ちている。
2ヶ月ほど前、娑婆離号(さぼりごう)で国分寺から高尾まで移動したことがあった。本当は高尾の山道を走るのを楽しみにしていたのだが、到着した頃にはバテてしまっていて、折角の自然を堪能することができなかった。それを解決するために今回は輪行バックを入手し、中央線で高尾までひとっ飛びに移動したのだ。
国道20号線は、土曜日の朝8時ということもあってか自動車も少なく。娑婆離号にまたがってペダルを踏むと、冷たい澄んだ空気が頬を切る。目の前には程よく色褪せた冬の山道が広がっており、最高の気分で走り続ける。このまま10キロほど先にある相模湖まで一気に行こう!・・・と思っていたのだが、実際はそんなに甘いものではなかった。
高尾山口駅から山道を走ること10分、徐々に坂道になってきたなぁと感じる。まぁその内また平地に戻るだろうと思っていたのだが一向に道が平らになる気配はなく、それどころか傾斜はどんどんきつくなってくるではないか。

景色は美しいが、坂がキツくて目に入らない。
「ゼハーッ、ゼハーッ」と肺の中から変な臭いのする息を吐きながら、心臓バクバクの状態で坂道を延々と登り続ける。ついには座った状態でペダルを漕ぐこともできなくなり、立ちあがって左右にダンシングしながら登っていく。肩から背負った郵便鞄が脇腹にズンズンと当たり、ボディーブローを受けているような感じ。
「いや、どんなに痛かろうが、キツかろうが、足を着かずに頂上へ至るのだ。それこそが、日本男児の自転車乗りというものである」 そう意気込んだ僕は、更にギアを上に上げるなり、勢い良くペダルを踏み込む。ガツン、ガツンとペダルを踏むたびに強烈な抵抗が僕の足を襲うが、負けじと太腿に力をこめて自転車をこぎ続ける。
その1分後、僕は地べたに座って水を飲んでいた。

相模湖。なんだか寂しい景色。
それから先はもはや自転車をこぐ気力すらなく、手で押して坂を登る。「なんだぁ!?、登山と同じくらいキツいじゃないか!!」 ゼハーッゼハーッとヘタレな呼吸を続けながら必至に前へと進む。すると背後から、全身ピタピタのサイクルウェアに身を包んだロードレーサーが颯爽と走り抜けていった。なんだかとっても悔しい。
それでも何とか頂上へ達すると、後は15分ほどの下り坂が続き、すぐに相模湖に到着。「やったー!!着いた!!」と両手をあげたまでは良かったが、フト落ち着いて周りの景色を見渡すと、何だか寂しい。セピアカラーの土産物屋街は、つげ義春よろしく、「侘び寂び」の情景そのままである。まだ昼前だからかもしれないが、観光客は僕以外に誰もいない。
どこからともなくジングルベルのメロディが流れてくるが、中途半端なクリスマス感は寂しさを余計際立たせるばかり。土産物の奥の暗がりから、「やっぱりアベックがいないと駄目かなぁ・・・」 と、ため息のような声が聞こえてきた。

相模湖公園のメインストリート。wabi-sabi感たっぷり。
湖の前の階段に腰掛け、握り飯をかじる。目の前を訳ありな雰囲気の中年カップルが通り過ぎる。男の黒い皮ジャンと、女の着ているクリーム色のロングコートという組み合わせが、つまらない昼ドラのようなやるせなさを感じさせる。
なんだか自転車で国分寺まで戻る気力がなくなったので、そのまま相模湖駅から中央線に乗って国分寺まで戻った。っていうのは言い訳で、実は疲れてしまって、これ以上走る気力がなかったのである。けれど近いうちに、もっと軽装備にして再度相模湖まえの峠にチャレンジしたいと思っている。
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